太宰治、異世界転生して勇者になる ~チートの多い生涯を送って来ました~

太宰治――勇者、薬物耐性LV99、川端康成特攻LV99

勇者、薬物耐性LV99、川端康成特攻LV99

著:高橋 弘 イラスト:VM500

第1巻11月25日発売

ストーリー|あらすじ

愛人、富栄と入水自殺を遂げた太宰治は、気がつくと見知らぬ川のほとりに立っていた。ここは地獄に違いない、きっと自分は閻魔に裁かれるのだと恐れる太宰だったが、どういうわけか住民は欧米人であった。てっきり地獄も文明開化したのかと思いきや、太宰は召喚勇者であり、人々を苦しめる魔王を倒しうる存在だと告げられる。いきなりそんな重い設定を語られても、富栄と離れ離れになったせいでやる気が出ない太宰だったが、魔王の正体が先に転生していた文豪、川端康成であると知り、芥川賞とか芥川賞とかあと芥川賞の件もあることだし、快く魔王討伐を引き受けるのだった(ただし、酒、女、自殺未遂をやめるとは言っていない)。こうして、勇者、太宰治――保有スキル「水属性魔法LV99」「薬物耐性LV99」「川端康成特攻LV99」――の冒険が始まる!

キャラクター

  • 太宰治

    太宰治

    誰もが知ってる大文豪。本名、津島修治。愛人、山崎富栄と入水心中を遂げた後、異世界に転生し、勇者となった。裕福な地主一家の元に生まれ、何不自由なく育ったせいか、甘えん坊でナイーブ。特技は小説を書くこととモテること。好きなものは酒と芥川龍之介と自殺未遂。生前の生き様が反映されてか、「水魔法」「薬物耐性」「川端康成特攻」などのスキルを保有している。本気を出せば大体何でもできるはずだが、大体いつもメンタルを崩しているため、美人の献身的な介護が無ければ力を発揮できない。

  • トミエ

    トミエ

    富栄恋しさに中々旅立とうとしない太宰を見かねて、村が用意した女性。本名はキャサリンと思われるが、強引にトミエで貫こうとするフリーダムな性格。小さな政府を支持しているらしく、魔王の政治介入を拒む他、規律ある民兵が銛で武装する権利を主張している。種族が人魚なので、どんな急流に飛び込もうとも溺死する恐れがない。やたら入水自殺したがる太宰のお目付け役としては、ぴったりの存在。ちなみに本物の富栄は美容学校の跡取り娘として育てられた才女であり、才色兼備の大和撫子とされている。

  • 川端康成

    川端康成

    日本人としては初めてノーベル文学賞を受賞した、偉大な文豪。太宰より早く異世界転生をしていたらしく、現在は魔王を名乗り、世界征服の真っ最中。生前から太宰とは因縁があるのだが、表面上は気にしていないようなそぶりを見せる。金を踏み倒す癖を除けば、人格者と言っていい人物であるため、何か目的があって魔王となった事が推測されるが……? 骨董品に目が無く、魔王の仕事そっちのけで集めてしまうわかりやすい弱点がある。

キーワード

  • 芥川賞
    純文学の新人に与えられる文学賞。第一回当時、新人だった太宰治もノミネートされるが、あえなく落選。この頃の太宰はパビナール中毒と借金に頭を悩ませており、芥川賞で金と名誉を同時にゲットして一発逆転、という甘い夢を見ていたようだ。そのため落選の衝撃は相当のものだったらしく、怒りの矛先は選考委員の一人だった川端康成に向かい、今でいう殺害予告に近い文章を雑誌に寄稿する。川端は至って大人な対応であしらったが、内心どう思っていたかは定かではない。なお、これだけ揉めた後も二人の交流は途切れなかったあたり、文豪の精神構造は常人とかけ離れていると言わざるを得ない。
  • 畜犬談
    太宰治の著作。実は太宰はユーモア溢れる作品もたくさん手掛けており、その代表例とも言える一作。滑稽かつ大げさな文章で犬嫌いの心理を語っておきながら、拾った子犬にどんどん情が移っていくツンデレな一面が描かれている。「勘違いしないでよね、犬なんか大嫌いなんだからね! ……お菓子食べる?」を地で行く太宰だが、人間相手にもそのような態度を取ることがあるのだろうか? 取るとしたら、それはどんな相手にだろうか? 余談だが、太宰は川端の作品をこき下ろした後、でも「雪国」だけはいいよね、とそっけないフォローを入れたエピソードが残っている。
  • 人間失格
    太宰治の代表作。自らをモデルとした青年・大庭葉蔵が、廃人となっていく過程が赤裸々な文章で綴られている。長い間、勢いに任せて自分の半生を語ったものと思われていたようだが、実際は何度も推敲を重ねて書かれた作品であり、誇張や創作が多分に含まれている。執筆当時の太宰は重い肺結核に侵されており、愛人・山崎富栄の献身的な看護を受けながら書き上げた。彼女はただの愛人ではなく、秘書と看護婦を兼ねた存在だったのだ。無論、そこまで尽くしてくれた女性と離れ離れになって耐えられる太宰ではなく、新しい依存対象を求めたのは必然であった。