
皇都で宝石商を営む青年アルベリクには、皇室御用達になるまで事業を成長させたいという夢があった。その実現のためなら手段を選ばず弱者を蹴落とし、ゴミ山さえ漁る……人々はその様を蔑み彼を《マルブールの赤目烏》と呼んだ。
ある日、店お抱えの老宝飾技師ガストン逝去の報を受け故郷を訪れたアルベリクは、ナタリー・ルルーという名の宝飾技師と出会う。ガストン最後の弟子を名乗る彼女は儚げで男を惹きつける美貌とは裏腹に、並ならぬ技倆を持っていた。そこに事業への勝機を感じたアルベリクは専属契約を結ぶこととなるが、彼女を巡る不穏な縁に段々と巻き込まれ……。
しかして、ナタリーが作りアルベリクが世に出す宝飾は次第に脚光を浴びていく。そして遂に、皇后との謁見もかなうこととなり……!?
これは、稀代の天才宝飾師を見出した平民生まれの宝石商が成り上がる物語であり——世界一の宝飾ブランド《リアーヌ》始まりの物語である。