「荒野に一分の商機あり」
その手紙を受け取った私は、まるで何かに突き動かされるかのように即日港を発った。
タヌカン領、いつ北方騎馬民族に飲み込まれてもおかしくない領だ。
タヌカン辺境伯家、財務状況は最悪の家だ。
フーシャンクラン、貧民どもにいいように使われているだけの、頭でっかちで甘ちゃんの子供としか思えない。
だが、なぜか私の心はタヌカン領に向いていた。
商人としての勘だろうか、はたまた神からの導きだろうか。
値千金の魔結晶を大量に燃やして、最新の魔導櫂船は小さな小さな商いの場所へと私を届けた。
衝撃であった、商会での地位も、築き上げた金も、全てが意味を失った。
この日、私は千年の主を得たのである。